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【テニプリ】闇菊【R18】

第84章 【ホントウハ】




「あの、それって____?」

「市川、小宮山を保健室に連れてってよ、オレ、模擬店に戻るからさ……」

「う、うん……」


私の問いにはもう英二くんは答えてくれなくて、美沙にそう私のことを頼むと、ゆっくりと手首を離して戻っていく。
璃音、行こ?、そう促してくれる美沙に、はい、なんて頷きながら、まだ英二くんの温もりがはっきりと残る手首に触れた。


保健室に向かいながら、こっそり英二くんの向かった先に視線を向けると、彼は私の失敗したタコ焼きを1つつまんで、躊躇うことなく口に運んでいて……


「お前、よく食えるな……つうか、いいのかよ、ミスコン始まんだろ?」

「まだダイジョーブだって、それより新しいタコ焼き焼けた!?」


みんなの中心でテキパキ動きながら、英二くんはさらにもう一つ、頬張っていて……
あんなの、1つだって、すごく辛いはずなのに……


やっぱり英二くんは、私の作ったもの、食べてくれるんだね……







「……ね、璃音……」


保健室で私の手当てをしてくれながら、ずっと黙っていた美沙が口を開く。
器用に巻かれて行く包帯を眺めながら、はい、そう小さく返事をする。


「英二ってさ……本当はまだ、あんたのこと……」


ピクッと私の手首が跳ねる。
私のその様子に、ううん、なんでもない、そう美沙は言葉を飲み込んだ。


コンコン


保健室のドアをノックする音が聞こえ、はい、そう美沙が返事をする。
失礼します、そう言って入って来たのはお母さんで、まさか来るなんて思っていなかったから、お母さん!?、なんて驚いて声を上げる。
そんな私にお母さんは呆れたように笑い、美沙ちゃん、ありがとうね、そう美沙にお礼を言った。


「大丈夫……?、出来ないくせにたこ焼きなんて焼くからよ?」

「……クラスの人たちに聞いたの?」

「ううん、せっかくだし見に来たら、璃音、男の子に腕を引かれてて……、大体のことはその惨状を見ていれば理解できたわ……」


あの子が英二くん、なのね……、そう呟いたお母さんはゆっくりと窓辺に移動して、それから外に視線を向けた。

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