第2章 アルスラーン戦記短編*ハロウィン
(俺としたことが、当たってしまった)
力なく剣を下ろすと、俯いて唸るように手を握りしめた。
カナヤたちはそんな事を知る由もなく、たんたんとハロウィンへ向けて準備を進めていた。
「あたしはネコかなっ」
楽しそうにそれっぽい仕草をするアルフリードが、耳を頭に付けてウキウキしていた。
それぞれの役どころは、アルスラーンは狼男、ギーヴは吸血鬼、エラムはカボチャオバケ、カナヤは魔女、という風に決まった。
やんちゃな彼女に猫はお似合いなのだが、そう、作られた衣装が少しばかり露出が過ぎる気がしないでもない。
(大方ナルサスに見せたいんだろうな、頑張れアルフリード!)
カナヤは妹の様にかわいがっているアルフリードの成功を心から願った。
ギーヴといえば
((((違和感がなさ過ぎる…!))))
吸血鬼の仮装をした彼をある意味感心して見ているのだった。
「カナヤ殿、このギーヴに見惚れましたか?ならば血を分け「ニンニク詰めるぞ」…」
世の年頃の女性ならば靡きそうな所だが、生憎とカナヤには全く効き目はなく、ギーヴは目に見えてガックリと肩を落としてしまった。
「あーあ、オーラまで黒くなってるよ」
意地悪くニヤニヤするアルフリードに、エラムとアルスラーンは苦笑いをするのみ。
エラムはカボチャをくり抜いて、頭から被ってカボチャオバケという具合だ。目や口や鼻の位置、衣装の作りもバッチリなのだが、いかんせん
「カボチャ臭い」
被ったカボチャに毒されるが如く、まるで自分が本当にカボチャになってしまったのかという位だ。
「長くは被れませんね、気分が悪くなってきそうで…………」
エラムがおもむろにカボチャを脱ごうとしたが、そのまま動かなくなってしまった。
「ぐっ、ぬ、脱げない!!」
「た、大変だ、エラムがホントにカボチャになってしまう!」
「なりません!じゃなくて!は、外してください、早く!」
悪戦苦闘の末、なんとか4人がかりで外したのであった…
アルスラーンは白い狼男で、大きめに作られた耳にフサフサの尻尾、頬にヒゲをつけてカナヤを振り返る。
「どうだろう、変ではないか?」
変どころか。
カナヤは打ち震えながら鼻息を荒くする。
「かっ、かっ、かわいい……!!」
「ほう、これはまた…」