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第2章 アルスラーン戦記短編*ハロウィン


暗がりからヌッと白い腕が伸びる。
そのままカナヤの腕を掴むと、振り向いた目が驚きで見開かれた。

「うぁ…ふがふご…う…ばぶばう(ナルサス)?」
「さよう…全く、なんて格好で、こんな夜更けに」

叫びそうになった#口をもう片方の手で塞がれて、目を白黒させて腕の主を確認すると、安心したように息を吐いた。
ナルサスの掌に湿った暖かい吐息が触れると、そっと手を離す。そして下から上に視線をスゥーと動かすと、蠱惑的な姿のカナヤを無言で指さした。
咄嗟の事で自分の姿など忘れていたらしい、カナヤは目線を落とすと羞恥であっという間に真っ赤になってしまった。
対するナルサスと言えば全く表情を変えずに呆れた顔をしていて、今度は別の意味で恥ずかしくなる。穴があったら入りたい所だ。

「最近やたらコソコソしていると思えば、理由はそれか。…ワケを聞かせてくれないか」

どうやらカナヤ達の隠し事はナルサスには通用しなかったらしい。夜な夜な理由を付けて側を離れるエラムを勘ぐって、今日は痺れを切らして後を付けていたのだという。
全く、誰ひとりとして尾行に気づかなかったのか。カナヤは少しむくれながらも、今日の趣旨をナルサスに詳らかにしたのだった。

「ふむ、なるほど。元は宗教的意味合いのつよいそれが、形を変えたのがハロウィンという訳だな。うむ、興味深い文化だ」
「まあ、そのハロウィンを楽しむために色々準備してたんだけどね。勘ぐらせるようにしてしまって、その、ごめんなさい」

素直に最後は謝ると、ナルサス片手で制してとんでもない事を言い出す。

「よし、私もそのハロウィンを満喫しようではないか!」
「…え、本気?仮装どうするの」
「なに、相手を驚かせるような姿ならいいんだろう?ここは未来の宮廷画家の腕の見せどころではないか。私の顔をキャンバスにして描けば問題ない」

なるほど。
じゃない。

(余計に問題になるんじゃないのか?)

一度だけ目にした、未来の宮廷画家の渾身の一作。
はっきりいって個性的を通り越した何かがそこに描かれていたのだ。
呪いでもかかっているのか。
カナヤは、その絵を見て以降、話題に一切触れないようにしていたのだ。

なのに、目の前のこの男には全く自覚が無いらしい。
ダリューンが頑なに否定する理由をその時痛感したのだった。
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