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第2章 アルスラーン戦記短編*ハロウィン


プツン、と、エラムの中の理性の糸が切れた音がした。

カナヤの肩を掴んでカーペットを敷いただけの床に押し倒す。

最初に出会った頃にもこういう事故はあったが、今回は違っていた。
エラムの目が怒っているようにも泣いているようにも見えて、カナヤはからかいすぎたと後悔する。

「ごめん、ちょっとやり過ぎた」

その謝罪が火に油を注いでしまったらしい、掴んでいた肩に力がこもる。

「いっ、痛い・・・エラム、ごめんって」
「ごめんで済むと、思っているんですか!私がいつもどれだけ気にかけてきたか、心配してきたか、あなたを想う気持ちがどれほどのものか、本当にわかっているんですか!!」

上からポタポタと生温い雫が落ちる。
それがカナヤの頬を濡らすと、見上げた先には、エラムの泣き顔があった。

追いつめてしまった。気づかないわけがなかった。
いつも何かあるたびに小言を言われて怒られて、それでも度々感じていたのだ、見守るような温かい視線を。
その優しさに甘えて、今まで気づかないふりをしていたのだ。

「ごめん、知ってた・・・というより、そんな気はしてたんだ」
「・・・」

緩められた手を避けて、カナヤはその涙を拭う。

「でも、確信が持てなかったんだ、だから、ごめん」
「・・・どういう意味の、ごめんですか」

ちゃんとした言葉で返して欲しい。
曖昧なままカナヤを帰す気はエラムにはさらさらなかった。

「・・・言いたく、無い」
「・・・っ、この期に及んで」
逃げるんですか、そう言おうとしたエラムの唇に温かい感触が伝わる。それがカナヤからの口付けであることに気づくまで、少し時間がかかった。

「・・・これが、答え。・・・だめ、かな?」

「・・・・・!!」

不意打ちにたじろいでカナヤから少し離れてしまうが、追うようにしてエラムの首に腕を回す。

「ああもう、あなたという人は・・・!」

応えるようにしてカナヤを抱きしめる。

「私、結構嫉妬深いからね?覚悟してて」
「それはこっちのセリフですよ、どれだけ待たされたと思っているんですか」

つかまえた

そう言うと、はだけたマントに彼女を隠すようにして、今度は彼から口づけをするのだった。




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エラムendです。疲れました・・・。
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