第2章 アルスラーン戦記短編*ハロウィン
「はぁ…あなたには振り回されっぱなしですよ」
天井を見上げてため息をさらに付くと、目線だけカナヤに向ける。
マントをぎゅっと握って俯いたその顔はフードを被っているため見えないが、恥ずかしかったのは同じらしい。
全く、そんな服を作って着せたギーヴには、流石にふざけすぎだと問い詰めてやりたい。
そんなことを考えてエラムは、はたと気付く。
カナヤの体型にぴったりの服を作るということは、彼女のサイズを知っていると言う事だ。
ギーヴが何故それを知っているのか。
普段からファランギースを追い回してばかりのギーヴがカナヤにもちょっかいをかけていたのは知っていたが、まさか。
「カナヤ、正直に答えてください。ギーヴ様と・・・お付き合いなさっているんですか?」
「は?いやいやいやいや万に一つもありえないから!天地がひっくり返ってもありえない、あの女たらしの節操なし相手とか!!」
「しかし、その服はギーヴ様が作ってくださったんですよね?そこまでぴったりというのもおかしな話かと思ったんですが」
「ぴったりって・・・どこ見てんだこの変態!!」
「へ、変態って、そこまで言わなくてもいいんじゃないですか?!私はあなたを心配して言ってるんですよ!」
そこまでの押し問答で、ん?と首をひねるカナヤ。
心配?あのエラムが自分の色恋沙汰を心配?
「心配って・・・」
急に顔が緩んでニヤニヤしだすカナヤに、なんですか気持ち悪い、と毒づくエラム。
「ねえ、エラムって、私のこと、好き?」
言いながらにじり寄っていく。
唐突な質問に声も出ないのだが、どうやらカナヤはそれを楽しんでいる様子だ。
証拠に、隠すように着ていたマントがはだけるのも気に留めずに、とうとうエラムの目前に迫っていた。
「な、なんですか」
「んー?んふふふ、私はエラムよりお姉さんだからね、弟が可愛くてつい、ね」
人差し指で頬をツンツンと突付いて挑発する。
カナヤの肌が月明かりに照らされて妖艶に見える。普段の男っぽい服装からは想像がつかなかったのだが、女性らしい体つきをしていた。
くびれた腰つきが艶めかしい。
エラムの鼻に掠めた、カナヤの匂い。