• テキストサイズ

ハウルの動く城 短編集

第1章 短編集1




月とハチミツ






「ホットケーキが食べたい!」






そんな葉子の一言で僕はこんな夜中にホットケーキを作っているわけなんだけどね?
嫌な顔せずにもくもくと材料を混ぜている自分はかなり一途だと想うよ、うん。
ブツブツ文句を言っているカルシファーをなだめながらフライパンに生地を流し込んだ。
それにしてもこんな夜中にホットケーキだなんて、いつもながら葉子の思考にはついていけないなあ。
そんなことを眠い頭で考えていたらちょっとホットケーキの裏が焦げ付いていた。



「あー!焦げてるじゃない、もう」
「ああ、ごめん」
「いいけどね。ホットケーキって無償に食べたくなる時があるんだよね。不思議だなぁ」
「ねぇ葉子、なんでこんな夜中にホットケーキなんだい?」
「だって、満月見てたらホットケーキに見えてきちゃって…」
「それはとっても葉子らしいね」
「なによ、食いしん坊だなぁとか思って呆れてるんでしょ?」
「これでも褒めてるんだけどな」


生地を裏返せば少し焦げ目のついた満月が。
そうか、今日は満月だったんだ


「ほら、出来たよ。ハチミツは?」
「もちろん、たっぷり」
「満月にはちみつ、か」
「ハニームーンだね」
「ああ、そうだね」


「ねえ、ハウル」
「ん?」
「外出て食べない?」
「ああ、それはいい考えかもね」
「でしょ?満月を見ながら満月を食べる!」


外に出るとそこにはこっちの満月とは違って透明で黄色い満月が。


「おいしそうだね、葉子」
「だね。」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」



おいしい!と言いながら満月をほおばる葉子の笑顔は
満月よりもずっと輝いている。


/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp