第2章 そうだ、デートに行こう。
メールの着信音がなる。
時計は夜の10:24を指していた。
ちょうどいい。一息入れよう。
地獄は昼間こそ活気にあふれているがそろそろ落ち着きを見せ始めていた。かと言って閻魔大王の第一補佐官である自分もはいさようならと帰るわけにはいかない。
仕事に重ねさらに仕事。一応上司である閻魔大王なんぞ当てにしたら逆に作業が遅れる恐れすらある。
今日で3徹目…もふもふに埋もれて眠りたい…
目頭をおさえケータイを開くとメールの送り主は日中に会ったさゆさんからだった。
果たして行動を起こせたのだろうか。
『鬼灯さま!明日の夜、白澤さんと桃源郷でお散歩デート(?)する事になりました!!相談乗ってくれてありがとうございました!!!とりあえず頑張ります!!^ ^
p.s.お忙しいでしょうからお返事はなくても大丈夫です!』
p.s.のこちらへの気遣いにデスクワークの疲れが少し癒された。こんな人があの浮気神獣の恋人だなんて本当に勿体無い。
何はともあれ、文面から彼女の嬉しそうな顔が目に浮かび、自分がそれに協力できた事に達成感を得た。
「鬼灯様〜お茶いかがですか?」
「ありがとうございます。いただきます。」
お香さんが持ってきてくれた湯呑みをうけとるとお茶の暖かさが手に染み渡る。減らないデスクワークでの欠かせない癒しの一つだ。
「ちょうど休憩していたところだったので助かりました。いつもありがとうございます。」
「あら、良かったわ。鬼灯様、放って置くとノンストップでやってる事もあるから。」
お香さんはにこっと微笑むと、あらメールとケータイを取り出した。画面に目を落とすとふふふと微笑む。
「白澤様、明日さゆちゃんとデートですって。凄い浮かれよう」
「そっちはそっちですか。私はさっきさゆさんから報告がきました。」
「ふふっ。2人とも可愛らしいわね。白澤様もこういうところが憎めないのよね。」
「アホ神獣の方には同意しかねますね。」
「相変わらずねぇ〜」
白澤のこういうところが嫌いだった。さゆを蔑ろにする様でも嫌だが、誰の目から見ても明らかに本気であるくせに、なぜ普段からもっと誠実に努められないのか。
はぁ…
無意識にため息が出る。
さっきよりも疲れが増した気がした。
どこか慣れない感覚があるがきっとこれは睡眠不足だろう。