第9章 どんぐりの背比べ
「嫌です気持ち悪い。」
『ーーーー〜〜っっ!!!!!!』
「わかりましたよ…はい。はい。じゃあ19:00に。ええ。はいはい。」
鬼灯さまが電話を切り、はぁ、と少し大きめのため息をつく。何やら電話口でごちゃごちゃ言っていた白澤さんの声はこちらまで届かなかった。
「おかげさまで今晩、白澤さんと飲むことになりました。ああ、桃太郎さんもご一緒に。」
「「はぁ?!」」
思わず桃太郎くんと声が重なる。
一体全体どうしたら犬猿の仲のこの2人が飲む話になるのだろうか。ていうかまさか白澤さんからそんな提案をするなんて…
とりあえずここは面倒ごとに巻き込まれる前にとんずらしとこう。
「えーっと…楽しんできてください…じゃあ私はこれでっ!」
「待ちなさい。」
逃げようとした手は呆気なく鬼灯さまに掴まれる。さすがは鬼灯さま、掴まれた手はビクともしない。
「このタイミングで逃げようとか結構いい根性してますね貴女…そもそもさゆさんのせいでこんなことになっているんですよ?」
「私のせいっていうか半分は鬼灯さまのせいでしょう?!鬼灯さまが白澤さんに言わなければこんな大騒ぎにならなかったのに…!!」
「貴女もあの白豚のウザさを体験すれば分かる。」
「1番の被害者は俺だけどね。」
確かに。と口論をしてたにも関わらず2人で同意してしまった。
家でも何度も、桃太郎くんが仲裁に入ってくれなかったらずっと言い争っていただろう。それに私単身で地獄なんて来たらまた白澤さんにうるさく言われるに決まっている。自分は散々花街へフラフラやってきてるくせに。
それは置いといて本当桃太郎くんがいて良かった。迷惑をかけっぱなしだが何だかんだ私たちの面倒を見てくれる彼は本当に神様のようだ。
「桃タローくん本当ごめん、今度なんか美味しいものご馳走するね…!」
「まぁ、いいよ。ていうか鬼灯様、本当に今日俺も行かなきゃ行けないんですかね?正直2人に挟まれたくないんですけど。」
「貴方を挟まないでろくな会話ができると思いますか?」
無理だろうな。と心の中で言うと桃太郎くんも同じ言葉を口にした。
でも何で私じゃなくて桃太郎くんなんだろう?
そう考える現状を落ち着かせるというよりも、白澤さんが鬼灯さまと話したいけど2人は嫌だから桃太郎くん呼んだってところだろうか。