第8章 バレンタイン特別短編(鬼灯)
暗い視界
耳にはコキコキと手を鳴らす音
「リラックスしてくださいね。痛くはしませんから。」
近づく足音に少しばかり緊張するがその言葉は、耳に入ると同時に溶けていく。
というのも
ベットに寝そべり、顔には暖かいタオルがかけられているこの状況は、徹夜明けの私に激しい眠気をけしかけてきていた。
そう、目をつむり、ベットに寝ているのは私、鬼灯で、先ほど手をコキコキと鳴らしていたのは意中の相手であるさゆさんだ。
「バレンタイン、私は関係ないかもだけど地獄ではチョコとかは賄賂になってしまうから元々禁止されてるってお香さんに聞いたんで、マッサージをさせてください。これでも現世では中々好評だったんですよ。」
そう自分の力こぶに手をかけながらニコリと笑うさゆさんの申し出を喜んで聞き入れ、私の部屋に来てもらい今に至る。
つまり私の部屋で、さゆさんにマッサージをしてもらっているということです。
大切なことなので2度言いました。
「うら若き女性が1人で男性の部屋に来るなんて頂けませんね…」
「ん〜私も死んでからそれなりに経ってるしそんな眠そうな声で言われても危機感を持てませんね。」
ふふっと笑いながらこめかみを優しく押される。
あーーーーもうダメですねこれ。
寝るのも時間の問題だ。
彼女と一緒に暮らしたらこんな感じだろうか…
まったりのんびり、ソファーに座りながら、隣で彼女が私に微笑んでくれる。
「最高ですね…」
「えっ本当ですか?良かった〜」
私の気も知らずに、嬉しそうなさゆさんはきっとあのふわりとした笑顔をしているのでしょう。
「鬼灯さま、時間になったら起こしますから、寝ててもらって大丈夫ですよ。」
「ええ、でも…」
せっかく貴女と2人きりなのに…
「えっ」
ああ…しまった…
声に出てたのか…
「せっかくさゆさんと2人きりなのですから、もっと、もっとお話をしたいんです…貴女のことを、もっと知りたいです…」
夢うつつ
もはやうっかり告白しない事だけに気をつけることしか出来ないくらい頭はボンヤリとしている。