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距離感がおかしい

第7章 話して触れて愛させて







「白澤さん!!」



呼ばれた声にハッとすれば視界はぼやけていた。
口と鼻に暖かく柔らかい感触がある。

えっ?なんだこれ?
なんだっけこの感触。

立ちくらみでぼやけた視界が徐々に戻ってくるように、少しずつ意識がはっきりしてくる。


僕はこの感触をよく知っている。
これは女の子の肌だ。



………………





………え?




ガバッと身体を起こすと眼下には髪も服も乱れ、頬を赤く染めたさゆちゃんがいた。

思わず奥から込み上がるものを感じる。
って今は欲情してる場合じゃない。


えっ?まって、落ち着いて考えよう。


記憶に残っているのはさゆちゃんのケータイにあいつの名前が表示されていたところだ。

恐らく僕のことを聞こうと思ったのだろうけど、あいつがさゆちゃんに気があると知った直後だっただけに、あいつと会話して欲しくないと思ってしまった。

それで……




があっと顔が赤くなるのを感じる。




押し倒して、キスした。




それだけだ。いい歳こいたカップルにとってはどうって事ないはず。そもそも今までに何度だって他の女の子にはしている。

なのに



「白澤さん?」
「あ、えっと…!ごめん!!!」


両手を上げ、そのままさゆちゃんの上からどく。


ああもう最低だ…
意識がはっきりするごとにどんどん湧き出る自己嫌悪。


さゆちゃんにはこんな勢いだけで触れたくなかった。未遂だったとはいえあのまま止められなかったら最後までいってしまっただろう。
もっと、もっと優しく、惹かれ合うように身体を重ねたいとずっと心に決めていた。
それなのにこんなくだらない嫉妬で襲うみたいに…

あ、なんかもう辛くなってきた…

気分はひどく落ち込んでいるのに、脳内にはさっきのさゆちゃんの艶っぽい目がフラッシュバックしている。






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