第7章 話して触れて愛させて
私はミスをしたかもしれない。
すぐ調子にのるこのアホ神獣を中途半端に甘やかしてはいけなかった。
「さゆちゃーん!髪にゴミついちゃった〜とってぇ〜♡」
「さゆちゃーん!腕まくってぇ〜♡」
私から触るのは有りという裏ルートを見つけた白澤さんは何かと理由をつけては触らせようとしてくる。
「さゆちゃーん!手にトゲ刺さったかも〜見て〜♡」
世が明けて、触り禁止を出してから3日目。まだお昼の1時半だが、既に10回以上は呼ばれている。
「桃太郎くん。」
「俺が見ますね。」
「大丈夫抜けました。刺さってませんでした。」
もはや全員声が同じトーン。
もはや面倒くさくなってきて解禁してしまおうかと思うレベル。
「さゆちゃーん触ってよぉ〜」
「捻りすらなくなりましたね。ていうか仕事してください。」
「えーさゆちゃんが頭撫でてくれたらやる〜」
もう外回りでも行ってこようかな。
「白澤様はもう芝刈ってきてください。」
「あれ?それ桃タローくんの仕事じゃないの??!」
「あ!私が行ってくる!!久々に身体動かしたいから。」
嘘はついていない。以前何回かやったけれど最近はやっていないし体鈍ってきたし白澤さんうるさいしちょうど良い。
支度をして「行ってきます」と言って外へ出る。
今日は特に天気も良く、風が心地良い。
やっぱりたまには外仕事も良いね。
1時間ほど作業をしたところで腰が痛くなりうーんと伸びをしているとつい最近、というか昨日会った人の姿が見えた。
「鬼灯さま…?」
「それって桃太郎さんの仕事じゃないんですか?」
やっぱり2人は似ている。