第12章 愛しい人へ(中編)
浄玻璃の鏡の前に立つ。
これを見るのは何年ぶりか。
「さゆさん、今日はわざわざありがとうございます。」
「いえ。」
この場にあるのは閻魔様、鬼灯さま、白澤さん、桃太郎くん。
最低限の人、私のことを知っていて欲しい人。
「これから、故人をお連れします。もし彼が下手な動きをしたらその時は私たちが護りますが、必要以上に近づきすぎないようにしてください。」
「はい。」
薄々気づいていたけれど、まさか彼が死んで、こんなところで再会することになろうとは…
人生何があるかわからないな。
既に死んでるから人生っていうのかわからないけれど。
ギイイと、音を立てながらゆっくりドアが開く。
その中から出てきた男は、幾分か老けてはいるが、優しい目に確かに面影が見えた。
「さゆ、久しぶり。」
ああ、この笑顔、この顔。
それは確かに愛した彼のものだ。
「久しぶり。」