第2章 着信あり
〈美琴さんの携帯電話ですか?〉
軽くパニックに陥り、電話を落としそうになる。
「あの、…はい、美琴です。」
なんて間抜けなんだろう……
日本に着てから、ドジばかり
気落ちする私に、電話口から、赤司さんの優しい声が聞こえる。
〈お兄さんと電話されていたの?〉
「いえ、…昨晩、実家へ連絡するのを忘れて寝てしまって…、起きたら兄から沢山着信が入っていたんです。あっ、先程、母が赤司さんから連絡を頂いたと聞きました。ありがとうございました。」
〈いや、気にすることない。気にしないで。〉
「…ぅぅ……。」
昨日の失態が走馬灯のよう……恥ずかしい…
火照った頬に手を添えると
〈今から食事はどう?昨日の今日で、身体が辛かったら無理には…。〉
「あ、いえ。ぐっすり寝かせて頂いたので、辛くはないです。」
私は、これ以上心配掛けたくないと思ったから、そう答えたのだけど
〈良かった。じゃあ、今から女子寮へ迎えに行くので、着いたら連絡する。待ってて。〉
そう言って、電話が切れた。
……ぇ?……えーーー!?
これから、赤司さんと食事?!
いつ決まったの?!
思考が止まってから、急速に回転し始めた。
まず、簡単に着替えた洋服を選び直すとこ ろから始めよう。
【征十郎】
電話を切って、携帯電話をローテーブルへ置いた。
白を基調に纏めた部屋だが、実際はあまり部屋にいない。
いつも何だかんだで、学校管理のトレーニングジムへ行くことが多い。
電話口の彼女に、また笑いが込み上げる。
俺は立ち上がり、外していた腕時計をした。アイボリーのVネックにグレーのジャケットを羽織る。
『さて、もういい頃だろう。』
ゆっくりした足取りで、部屋を出た。
後、数メートルの所で、人影を見つける。
髪の毛を緩くサイドアップして、白地に紫のの小花のワンピース。その上に白のショートダッフルコートを来て、立っている。
うん、似合ってる。
「……あ。」
彼女は俺に気がついて、こちらを見てお辞儀をした。
「待たせたのかな?」
「いえ、今、出てきたんです。」
「そう。…じゃあ、行こうか。」
そう言って、俺は彼女の前を歩いた。