第16章 友情の亀裂
「……美琴。」
「……ん。あ、優希。ここ……。」
消毒液と白い天井、優希の心配に眉を下げている顔が見える。
私は、起き上がろうと上半身に力を入れると、優希に止められる。
「あ、駄目。美琴、後頭部にボール思いっきり当たって、倒れたんだから。ここは保健室。」
「あ……ごめんなさい。練習中は、後ろ向いちゃいけなかったのに……。」
バスケ部の決まりで、いつボールが飛んでくるか分からないので、極力コートに背を向けちゃいけないと言われていたのに、そんな初歩的なことまで、出来なくなっていた。
私は自分の迂闊さに、落ち込む。
「……あたしで良かったら話聞くよ。話してごらん?」
優希が優しく私の額を撫でてくれる。
私は、優希を見つめて、今朝の話をすることにした。
「……今朝、朝練の後、鳳凰院さんとお話したの。」
「あぁ、赤司さまのもう一人の婚約者ね。」
「…うん。」
「で?」
「征十郎さんの、婚約者になる気はあるのかって。
香澄さんは、マネージャーとして征十郎さんを支えて、いずれ彼の正式な婚約者になるって。
私、どうしたらいいのかな……。」
すると、優希は険しい顔になって、私から距離をとり、保健室から出ていこうとする。
「待ってっ!優希…?」
私は、上半身をお越し、優希を呼び止める。
「…私はさ、今のチームが好きで、これから始まるIHも、絶対優勝するって思ってる。
部員全員、その気持ちで一丸になってる。
だから……ごめん、今の美琴は、うちの部にいらない。」
「……ぇ……?」
「赤司さまの婚約者として、男子部のマネージャーになった方がいいよ。じゃね。」
そういって、保健室の扉が閉まった。
私を一人残して。