第16章 友情の亀裂
[美琴]
「「「「ファイっ!オッ!ファイっ!オッ!」」」」
今週末には、IH予選リーグが始まる。
中間テストも終わり、本格的に両部の練習が始まった。
私は、水樹ちゃんと一緒に、ゼッケンとハンドタオルなど、洗濯物を干していた。
この後は、部内紅白戦の記録を取りに、体育館に戻る。
でも、私は、隣の体育館が気になって、視線を向けると、開け放たれた扉の向こうに男子部が見える。
征十郎さんは、他の部員さんたちの練習を見て、副部長と話をしている。
そして、征十郎さんの隣に、香澄さんがいた。
~ あのパーティーの日。
私は、征十郎さんのホテルの部屋で、パジャマを着て寝ていた。
驚いて飛び起き、寝室から出ようとすると、扉に顔をぶつけてしまう。
「っ痛い……。」
涙目になりながら、扉を開けると、征十郎さんが制服のワイシャツのカフスボタンを止めているところだった。
「おはよう、美琴。よく眠れた?」
「あ……あの……私……。」
目を見開いて、爽やかに目を細める征十郎さんに、ボーッと見つめてしまう。
「美琴、着替えは寝室に掛けておいたよ。」
「着替え…?……っあ!私、え?!パジャマ?!」
自分の格好に驚いて、自分の隠すように、しゃがみこんだ。
「美琴、ここで待ってるから、着替えておいで。」
征十郎さんの爪先が、しゃがみこんだ私の視界に入る。
私は戸惑って、そおっと顔だけあげると、征十郎さんが眼鏡を掛けさせてくれた。
「さっき、これがなかったから、扉でぶつけたでしょ?これで見えるかい?」
征十郎さんは、私のぶつけた額にキスして、笑った。
私は、眼鏡があるせいでよく見えてしまう征十郎さんのどアップに、顔を赤くして、後ずさり、逃げるように寝室に帰った。