第9章 テスト前の勉強会
[征十郎]
土曜日の午後。
カリカリカリ
ペラッ
洛山高校 図書館 自習室
いつもなら、俺も美琴も部活動に励んでいるのだが、来週から始まる、中間テストの為、一緒に図書室に来ていた。
外国暮らしが長い美琴は、国語が不安だと、優希に言っているのを聞いて、テストに入る前の部活最終日に、美琴を誘ってみた。
ペラ ペラ ペラ
カリカリカリ
美琴は、辞書を片手に、ノートにペンを走らせている。
俺は、手に読みかけの本を持ち、美琴の真剣な横顔を、頬杖しながら観察する。
すると、自習室の窓から風が入ってきた。
手の中にある、本のページが風でめくれる。
ペラペラペラ
俺は、風が入ってきた窓に視線を向けた。
窓の外には、桜が散った木々が青々として、鳥が鳴いている。
俺はまた、ゆっくり美琴に視線を戻し、彼女の横顔を見つめる。
『一ヶ月か…。』
美琴が日本にやって来て、一ヶ月がたった。
彼女は、今の生活にも馴れてきたのか、学校での勉強も、部活のマネージャー業も、毎日楽しそうに、一生懸命こなしている。
ふと、俺の視線に気がついたのか、美琴が顔を上げた。
「退屈ですか?」
ささやく声で俺に聞いてきた美琴は、眉が下がり困った顔をしている。
「いいや。僕はこれを読むから、心配ないよ。」
俺は、手の中の本を指で軽く叩き、微笑んだ。
すると、美琴は少し顔を赤くして微笑むと、またノートに視線を戻した。
俺も、これ以上意識させないように、本に視線を落とした。