第30章 夏合宿 ⑤君の能力
[美琴]
夜8時。
1日目の練習を終え、宿舎に戻ると、大食堂でみんなでご飯を食べてから、2日目のミーティングに集められた。
集められたのは、部長・副部長・各班の班長・マネージャーだった。
私たちは、すでにお風呂も入っていて、ジャージ姿で先程ご飯を食べた大広間に顔を出した。
すると、実渕先輩が私たちの入室に気づいて、手をヒラヒラ振りながらニッコリ笑顔で近づいてきた。
「優希。ちゃんとお手入れしてんの?肌つっぱってるわよ?」
「いーんです。化粧水は振ってますし。そーいう実渕さんは、お手入れカンペキっぽいですね。」
「当たり前!日々のお手入れは、美肌の第一歩よ。」
「さよーですか。」
まるで兄弟(姉妹?)のように仲がいい2人を笑いながらみていると、急に実渕先輩が私の顔を覗き込んで
「…美琴ちゃん、今日陽に焼けた?ちょっと赤くなってない?」
「わっ!」
まさか自分に矛先が回ってくるとは思っていなくて、仰け反ると、優希が間に入ってきてくれた。
「実渕先輩、それセクハラですよ。」
ボソッと呟いた優希に、実渕先輩は、「失礼なっ!?」と大袈裟に嘆いて、苦笑して両手をヒラリと挙げたあと、
「じゃ、席に戻るわ。」と自分の席に帰っていった。
そんな実渕先輩を見送りながら、満足そうにほくそえんでいる優希に視線を送る
「別にセクハラじゃなかったよ?優希。」
「まぁまぁ、いいじゃないの。ほら、あたし達も席に行こ。」
明らかに面白がっている優希が、私の後ろにまわって、両肩を押したのだった。
こうして、召集された全員が席につき、1日目の報告・2日目の予定が話し合われ、解散となったのだが。