第28章 夏合宿 ③海と山でトレーニング
[征十郎]
俺たちは、山道の歩道をロードワークしていた。
いつもと違う山道、景色。
鳥の囀りも聞こえる。
通りすぎる緑を感じて、俺は目を細めた。
そんな時、ふいに葉山が、俺に声を掛けてきた。
「なぁ、赤司。俺たちも海が良かったよな。」
葉山の言葉に眉を潜め、振り返った。
「あたし達も、この後海でしょ?」
呆れた声をあげる玲央に、ちげーって!と葉山は拗ねた態度を取った。
「入れ替わりになっちゃうじゃん!
美琴ちゃんたちは次、体育館へ移動で、見れないよっ、水着!」
……。
その言葉に、山の空気が5度は下がった。
これは俺たちが山の中を走っているからではない。
マイナスイオンで、冷えた訳でもない。
真っ先にこの事態を感じ取ったのは、玲央で、横を走る葉山の頭をバシンッと叩いた。
「馬鹿なの、アンタ!!」
「いってーーー!ナニすんだよっ、玲央ネェ!!」
「死にたいの!?」
ロードワーク中に不愉快極まりない発言と態度に、俺の怒りボルゲージが上昇していく。
「お前達。」
すべての音が全部消えたような錯覚を起こさせる俺の声に、チーム全員が身をすくませ、その後は誰も発言せず、ロードワークは終わった。