第22章 アナタハダレ?
[征十郎(僕)]
彼女が走り去る後ろ姿を見送って、俺に話し掛けた。
「やっぱり侮れないな。僕を見破るなんて。
彼女は、本物だ。」
(そうだろう。
俺が好きになった人だからな。)
空がどんどん暗くなる。
俺は、初夏に近づく風を感じながら、前髪を握った。
「しかし……彼女のことに動揺して、僕と交代してしまうなんて、俺もまだまだだな。」
(…最近、俺自身、驚くほど彼女の一喜一憂に翻弄されているよ。だからなのか、今日、怒りが抑えきれなくて、僕と交代してしまった。)
「…彼女は僕たちを怖がっていた。」
(あぁ…でも…)
「(絶対に離さないよ。)」
見上げると、細い月が征十郎を見下ろしていた。