第19章 みんなでイジメ?!
[涼太]
IH直前合宿が終わって、次の日。
明日は、IH初戦。
俺は、海常の体育館で、スタメンメンバーで自主トレに励んでいた。
美空っちは今頃、甲子園で野球部の写真を撮影しているだろう。
顎まで滴る汗を拭わず、俺はボールをドリブルする。
「…っ!」
踏み出した右足に、若干の痛みを感じて顔をしかめた。
「おい、黄瀬っ!無理すんじゃねー!!試合前日に故障とか、シャレになんねーだろーがっ?!」
笠松センパイが、俺の異変に気づいて、怒鳴ってくる。
「…っ、全然そんなんじゃないっスよ。」
俺は、足の痛みを誤魔化すように笑うが、笠松センパイは笑っていなかった。
「……りょーかいっス。ちょっと休みます。」
俺は、ズキンと痛む足を感じながら、コートを出る。
IH。
勝ち進めば、準々決勝で青峰っちに当たる。
俺が、バスケを始めたキッカケ。
そいつが、俺の前に敵として現れる。
『…勝ちたい…』
俺は、このチームで勝ちたい。
強い意思で拳を握り、タオルを頭に被った。
床に座り、足のアイシングを始めると、取材にきていた広瀬センパイがいた。
「よっ。足大丈夫?」
「…まぁ、大丈夫っス。明日は勝つっスよ。」
タオルの間から、広瀬センパイを見上げた。
「黄瀬くん、大丈夫ですか?明日、頑張ってくださいね。美空センパイも応援してるって言ってましたから!」
すると、胡桃サンが広瀬センパイの後ろから、カメラをもって顔を出した。
「胡桃サン、美空っちと連絡取ってるんスか?」
きょとんと胡桃サンを見上げると、胡桃サンが笑っていた。
「はいっ。モチロンですっ。入部してから、いっつも連絡しあってますよ。」
入部してから、い つ も だ と……?
俺は、自分よりも頻度が高い胡桃サンを凝視した。