第18章 夏の予定とモヤモヤした気持ち
[涼太]
美空っちと一緒にシャワーを浴びようとベッドから起き出して、ドアを開けようとして、開かなかった。
どうやら、鍵を掛けられているらしい。
『…ホント、抜け目がないっスね。』
俺は苦笑して、美空っちのシャワーを待った。
きっと今頃、俺が部屋にいなくて、部員たちに、イロイロバレてるだろう。
俺は、自分の携帯を手に取り、一応着信がないか確認する。
『着信なしっと。』
携帯を机に置くと、“夏休み・新聞部予定表”と銘打った紙が置いてあった。
その紙には、部員それぞれの担当部活や、取材場所・期間がぎっしり書いてあった。
俺は、美空っちの予定の欄を指でなぞって読む。
明日から2週間、甲子園にて野球部の取材。
お盆前の2日間、千葉で水泳部の取材。
そして、8月最終週、甲子園にて野球部取材と書いてある。
忙しそうな予定表に苦笑してしまう。
そして、小さく〔野球部敗退した場合、神奈川帰宅。受験勉強。〕と青いペンで、メモ書きされていた。
『この字、美空っちの字?』
可愛い丸い字が並んでいる。
そして、“受験勉強”という言葉に、はっとした。
『そうだ。美空っち、3年だったっスね。』
予定表を机に置き、ベッドに腰かける。
後、1年もしないうちに、卒業してしまう。
そのことに気がついて、心が重くなった。
「涼太、お待たせ。シャワーどーぞ。」
シャワー室から、美空っちが出てきた。
Tシャツにスエットで出てきて、髪の毛を拭いていた。
「あ、うん。了解っス。」
俺は、予定表を見て感じてしまったどうしようもない気持ちを、美空っちに悟られないように、シャワー室へ入った。