第16章 合宿、最後の夜 ※R18指定
[涼太]
眠れない。
明日から、美空っちは傍にいない。
美空っちは、甲子園。
俺は、神奈川。
ベッドから起き出して、横のベッドを見る。
同室の早川センパイが、イビキをかいて気持ち良さそうに寝てる。
俺は、センパイのイビキと、明日からのことで眠れない。
センパイを起こさないように、静かに部屋を出る。
暗い廊下に出て、俺は自販機で炭酸水を買った。
そして、無糖の炭酸水を飲んで、横に設置してある、ベンチに腰かける。
『…美空っち、もう寝ちゃったかな…?』
俺は携帯を取り出し、連絡しようとして、手が止まる。
「…俺、美空っちの番号知らない…。
あっちゃー…さっき一緒にいたんだから、聞いときゃよかったっス…。」
自分のアホさ加減に、苦笑する。
部屋は聞いてあるから、行こうか。
でも、きっと寝てるだろうし…。
俺は、携帯を握りながら、悶々と考えていると、反対側から広瀬センパイがやって来た。
自販機でコーヒーを買って、俺の隣に座った。
「…なんスか?」
「んー?コーヒー買いにきただけだよ~。」
そう言いながら、俺の横でコーヒーを飲んでいる。
「…俺に用事っスか?」
俺は、自販機に照らされた、広瀬センパイを見る。
「んーー…。いや、謝るってのもおかしい話だけど、一応ね。ごめんね。」
広瀬センパイは、苦笑してコーヒーの缶を両手で包み込む。
「なにがっスか?」
「二人は両思いになって、幸せいっぱいなのに、離ればなれにさせちゃうだろ?ごめんなって思って。」
「…ホントっス。」
俺は広瀬センパイの気遣いを感じて、笑ってしまう。