第14章 撮りたかったな…
[美空]
ご飯を食べて、涼太と別れ、私は胡桃ちゃんの部屋へ行った。
胡桃ちゃんは、夕食のお粥を食べ、大分体力が回復したようだった。
「写真、見たよ。よく頑張ったね。ピンぼけもあるけど、部員全員の熱意が伝わる、ちゃんとしたいい写真だった。」
「っ。美空センパイっ!私…私、頑張ります!」
その顔は、1か月前の弱々しい胡桃ちゃんではなくて、しっかり、カメラマンの顔をした、胡桃ちゃんになっていた。
「今日、明日しっかり休んで、帰ろうね。次の週には、バレー部とバスケ部のIH本番だからね。」
その後、少し話をして、彼女の部屋を後にした。
廊下を歩く。
そう。
涼太のIHは、胡桃ちゃんが撮る。
私は、甲子園で、野球部を撮る。
分かっている。
でも、涼太の姿を撮りたい。
涼太が、全国の舞台でどんな活躍をするのか。
「……撮りたかったな…。」
そっと一人で呟いて、廊下を歩くのだった。