第13章 ずっと忘れない。
[美空]
涼太に抱き締められ、キスされて、私は腰砕けになってしまった。
そして、今、暗がりの体育館に二人で座っている。
涼太の両足の間にすっぽり入って、涼太に後ろから、抱き締められた。
「実はね。秋まで、涼太には会えない予定だったの。」
「えっ!なんでっスか?!」
涼太の驚いている声が、すぐ近くにある。
「野球部と水泳部が強かったからね。」
「…あーー俺、今、すげーいけないこと考えたっス。」
「…なんとなく分かるけど、そういうことは考えないの。」
苦笑しながら、自分の前に組まれてる手に、自分の手を重ねる。
すると、涼太は指を絡ませ、手を繋ぐ。
「明日は練習試合だね。」
「そうっスよ。絶対勝つから、美空っち。ちゃんと撮ってね。」
「うん。しっかり、残すよ。涼太の頑張り。」
「…俺、美空っちのそういうとこ好きっス。」
そういって、私の肩口に頭を埋めた。
私は、彼の頭に頬を寄せる。
すると、涼太の顔が上がって、視線が絡む。
そして、唇が重なる瞬間。
プルルルルルルッ
携帯の着信音が、私たちを止めた。
涼太は、ポケットから携帯を取り出し、蒼白した顔になる。
「ヤバイッ!夕飯っ!!」
どうやら、笠松くんからで、後、10分で宿に帰らないと、涼太の分を食ってやるという連絡だったらしい。
「もっとこうしていたいっスけど。」
「涼太の夕飯、無くなっちゃうからね。」
私たちは、笑い合って体育館を後にした。
しっかり、手をつないで。