第12章 嫉妬。そして…
[美空]
「つ、着いた……。」
明後日の甲子園用に用意していた、遠征トランクをゴロゴロしながら、やってきた。
軽井沢駅。
電話を切ってから、私はすぐ荷物を取りに帰り、東京駅に向かった。
軽井沢までの電車の中で、写真の編集をしていると、あっという間に着いた。
私は、駅のタクシー乗り場に行き、合宿場所を伝え、タクシーは走り出した。
私は、流れる軽井沢の町並みを見ていた。
「よ!卯月!」
合宿場の前で、広瀬が待っていて、タクシーから降りた私をみて、軽く挨拶してきた。
「胡桃ちゃんは?」
「部屋。」
「案内してよ。」
「へいへい。」
広瀬に私の荷物を持たせ、部屋へ案内させた。
そして、胡桃ちゃんの部屋の前に着いた。
コンコン
ドアをノックすると、はい。と小さい声がする。
私は一人で部屋の中に入り、ベッドで横になっている胡桃ちゃんに、ゆっくり近づいた。
「胡桃ちゃん。」
「美空センパイっ。ご、ごめんな……さいっ。」
大きな瞳から、涙が流れ、枕に顔を埋めてしまう。
「よく頑張ったね。偉かったね、胡桃ちゃん。」
柔らかい胡桃ちゃんの頭を優しく撫でてあげる。
すると、埋めていた顔をあげて、私を見てくれた。
「……怒らないんですか……?」
「なんで怒るの?胡桃ちゃんは、頑張りすぎちゃっただけでしょ?
頑張ったね、胡桃ちゃん。」
「っう…………美空センパイっ!!」
胡桃ちゃんは、私に抱きついて、涙を流した。
私は、胡桃ちゃんの頭と背中を優しく撫でてあげていた。
しばらく、胡桃ちゃんの傍について、寝てしまうのを見届けて、部屋を出た。
すると、広瀬が廊下で待っていた。