第10章 新しいカメラマン
[美空]
あれから、中間テスト期間に入り、全部活、活動停止になった。
なのに、私は…
「忙しー……。…私は、受験生です。勉強しなくてはいけません。」
死んだ魚の目をして、新聞部の部室でパソコンを前に突っ伏している。
「勉強する気もないくせに…。しゃーないだろよぉ。お前の代わりいないんだから。」
私に背を向けて、次号の記事を書いている広瀬に、私は消ゴムを投げつける。
「でも、今年の夏は、本当に私一人じゃ、回りきれないよぉー…。
…何、この予定表。何で甲子園にいる人間が、同じ日に、全国総合体育館に居れるのよ…。
…それに…」
黄瀬くんと、あれから会っていない。
テスト期間だから、もちろん撮影もない。
でも、テストが終われば、IH予選決勝リーグが開幕する。
予選決勝リーグには、撮影しに行かない訳にいかない。
…私は、ちゃんと彼を撮ることが出来るのかな…。
物思いに耽っていると、記事を書いていた手を止め、広瀬は私を仰ぎ見た。
「お前、なんかあったの?」
「え?!な、なんで…?」
内心、ドキッと心臓が跳ねるが、悟られないように、パソコンで顔を隠す。
「……ま、言いたくないなら、無理には聞かねぇけど。」
ほっと息を吐くと、パソコンの端から、広瀬と目が合う。
「うっ…。と、とにかく!
誰かカメラマンを増やさないと、きついよ。私逹、来年卒業なんだから、後継者探さなきゃ!」
私は無理矢理話を変えて、広瀬を見た。
まだ何か言いたそうにしている、広瀬は、ようやく諦めて話を変えた。
「…確かに、お前一人じゃ、この夏は越えられないし、卒業までに、誰か育成しなくちゃならないよな。そこでだ!!」
突然、広瀬は立ち上がり、私の前に、ポスターをかざした。
「“求む、カメラマン!生徒の輝く瞬間を狙えっ!”……なにこれ…。」
私は、広瀬からポスターを受け取り、脱力する。
「募集だよ。この新聞部の後輩は、俺同様、カメラのセンス皆無だっただろ?
だから、募集かけるしかねーって。」
「…こんな感じで、集まるのかな…。」
私は、期待が薄いポスターをみて、ため息をついたのだった。