第9章 初めてのキス
[美空]
「「「「「ご馳走さまでしたー」」」」」
やっぱり、運動部の男子とご飯を食べるとスゴい。
まー食べること食べること。
いつも以上に食べてしまって、お腹が苦しい。
お会計をして店を出ると。
「よし、じゃあ、帰ろうぜ。明日は普通に学校だしな。解散っ。」
笠松くんが言うと、帰るグループに別れた。
私は黄瀬くんと帰ることになった。
「それ、重くないっスか?持つっスよ。」
黄瀬くんはカメラケースを持とうと、大きな手を出してくれた。
「大丈夫。私の一番大事なものだから、自分で持つよ。」
そういうと、黄瀬くんは、断られるとは思わなかったのか、少し驚く顔をした。
「美空っちって、なんで、カメラやってるんスか?」
夜道を歩きながら、黄瀬くんと話をする。
人気者の黄瀬くんと二人きりで歩くなんて、少し前の私にはあり得ない現実。
「父の影響だよ。父の姿を見て、私もなりたいなって。」
「そうなんスね。」
質問されたから、私も黄瀬くんに聞いてみたいことを、聞いてみた。
「黄瀬くんは?なんでバスケットしてるの?」
すると、黄瀬くんは嬉しそうに私に教えてくれた。
「俺は、青峰っちのプレーを見てっス。」
「青峰くん?」
「同中の仲間っス。
青峰っちはスゴいんスっ!全然越えられる気がしなくって。
…俺、スポーツすれば、なんでも出来ちゃうし、勝っちゃうんスけど、青峰っちだけは、なんか別格って感じで…。」
「…黄瀬くんにそんなことを言わせてしまう、青峰くんは、本当にスゴい選手なんだね。」
明らかに今まで知ってる黄瀬くんとは違う顔。
会えば会うほど、彼は違う顔を見せてくれる。
そんな不思議な彼に、とても魅力を感じて、微笑んでしまう。
すると突然、黄瀬くんが立ち
止まった。
「?どうしたの?」
声を掛けるけど、黄瀬くんは答えない。
そして
「!」
キスされた。
触れるだけの、軽いキス。
公園前の街灯の下。
逆光で影になってる黄瀬くんを、私は驚いて見つめた。