第1章 派手な後輩
【美空】
「一生のお願いっ!」
そう言って、私の前の席を陣取り椅子を跨いで手を着く親友、杏奈。
彼女は、高校に入学してから知り合って、今では大親友。
一緒に登下校をして、休日には遊びに行ったりもする。
とにかく気が合う友達なのだ。
だから、彼女のお願いは出来るだけ聞いてあげたい。
でも、私は嫌な顔しかできない。
「やだよ。宣材写真の横流しなんて…。」
そう、彼女は今日行う部活動撮影時の写真が欲しいとねだっているのだった。
「そう言わずに!!お願いっ!」
尚も食い下がる杏奈にため息をつく。
お目当ては、一年、黄瀬涼太。最近雑誌にも顔を出す売り出し中モデルにして、海常高校バスケット部エース。
「何がそんなにいいんだか…派手なだけじゃない?」
私はこの親友が好きな黄瀬涼太をあまり好きじゃない。出来れば関わりたくない人種なのに…。
「美空だって、黄瀬くんに会えば分かるよ!話すと明るくて、見るとかっこいいなんて、反則だよ~」
「じゃあ、自分で撮ってくればいいんじゃない?私じゃなくても…。」
黄瀬くんを思い出しているのか、ヘナヘナする杏奈に、呆れる。
「私は、美空が撮った黄瀬くんが欲しいのっ!美空の写真、好きだから☆」
杏奈のとびきりの笑顔に、圧されてしまった。
「う…………もう、分かった。でも、本人承諾なしの横流しはしたくないから、本人にちゃんと許可とってよ?」
「え?!うー…分かった…。」
納得してくれた杏奈に一安心すると、突然杏奈が立ち上がった。
「今度はなぁに?」
もう勘弁してと脱力していたら、腕を引っ張られ、私まで立ち上がらせた。
「杏奈?」
「よしっ!一緒にきて。許可取りにいこう!」
そう言ってぐいぐい私を引っ張っていった。
「ちょっ!ちょっとっ!杏奈!」
教室を出て、廊下を歩く。
『なんか、めんどくさいことになったなぁ…』
杏奈に気づかれないようにため息をついた。