第4章 黄瀬の学校生活
【美空】
「卯月センパイっ!」
お昼休み、杏奈と一緒にお弁当を食べていると、廊下の窓から、こっちを見てヒラヒラ手を振っている。
「黄瀬くん?!」
驚いて声を上げると、突然黄瀬くんが、視界から消えた。
「シバかれる準備は出来てんだろうなぁ?!黄瀬ぇ!!!」
「もーシバいてんじゃないっスかぁ!!」
どうやら、廊下にいた笠松くんに見つかって後ろから蹴り飛ばされたみたいだ。
「きゃー!黄瀬くん、大丈夫?」
杏奈はすぐに黄瀬くんへ駆け寄るが、黄瀬はさらりとかわして、私の席の近くにきた。
「それより、卯月センパイ!体育の時間、すげーかっこ良かったっス!」
この前とは違う表情の黄瀬くんに、少々戸惑いながら話を聞いてあげる。
「あ、ありがとう。って、見てたの?何処から?」
「教室の窓からっス。」
「勉強をしなさい、一年生。」
授業中に他の授業を見ている黄瀬くんに、呆れて苦笑する。
「おい、黄瀬。今日は来るんだろうな、部活。」
「行くっス。」
「そうか、じゃあ遅れんなよ。」
そう言って、笠松くんはまた廊下に出ていった。
黄瀬くんもそれ以上、笠松くんを振り返らなかった。