第35章 ストバスコートで
「あいよ、またね!黒子っち。火神っち!」
「さよならっ。」
私達は、コートから手を振り見送った。
静かになったコートで、私は、ボールをパスしようと涼太を見ると、急に涼太に抱きつかれた。
私はバランスを崩し掛けて、涼太の胸に飛び込む形になった。
「涼太?!どーしたの??」
「…なんスか?用事って。」
「え?あぁ、来週のこと?
実は、お父さんが海外から帰ってくるの。
で、久しぶりに、お父さんのフォトスタジオで仕事の手伝いするって、約束してて…。」
「なーんだ、お父さん……。
って、美空のお父さん……?
お、俺っ、アイサツとかした方がよくないっスかっ?!」
「なんで?!」
涼太が抱きついていた腕をほどいて、私の肩に大きな手を置いた。
「ほらっ、娘さんとお付き合いしてますって!!」
「しなくていいですっ!」
…なんか、娘さんをくださいみたいじゃない……
思い付いた内容に、一人顔を赤くしていると、涼太が私の腰を両手で掴み上げて、高い高いみたいになった。
突然で驚いて、私は涼太の肩を両手で叩いて抗議する。
「りょっ、涼太っ?!ヤダッ!恥ずかしいから、下ろしてっ!!」
「ダーメっス。
………ねっ!美空。」
「もっ何っ?!」
「俺、大人になったら、ちゃんと美空にプロポーズするっス。」
「 え ?」
涼太の今の言葉を理解出来なくて、でも、私の頬はどんどん赤くなっていくしで。
「で、そん時に、娘さんを俺にくださいって、かっこよくお父さんに言うっス。だから……
期待して待ってて欲しいっス。」
そう言って笑う涼太を、いつもより上から見つめる。
私はどう答えたらいいか分からなくて、
「…うん、分かった。」
と答えるのがやっとだった。