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~ファインダーの向こう側~【黒子のバスケ☆黄瀬】

第32章 報復


「…貴女は、美空センパイさんですか?」

俯いている私に、優しい響きの女性の声がする。私は顔をあげると、胡桃ちゃんによく似た顔の、女性だった。


「いつも、うちの娘がお世話になっております。」


そう言ってお辞儀をされたので、私も反射的にお辞儀をした。


「あの…?」

「申し遅れました、私はあの子の母親です。」


私は、胡桃ちゃんをこんな目に合わせてしまって、居たたまれなくなっていると、胡桃ちゃんのお母さんは私の手を握り、お礼を言われた。


「貴女と出会って、あの子は変わりました。明るくなって、学校生活も楽しそうで。…あの子、毎日貴女の話をするんですよ。
いつか、貴女のようになりたいとも。」


私は、胡桃ちゃんのお母さんの言葉に、嬉しさで胸がいっぱいになる。


「…ありがとうございます。そして、申し訳ありません。
胡桃さんが怪我をしたのは、私のせいなんです。本当にごめんなさい。」


私は、胡桃ちゃんのお母さんに深く頭を下げ、心から謝罪した。


「いいえ、貴女に責任はないと聞いています。」

「え?」

「娘が事故に遭ったとき、一部始終見ていた生徒さんがいて、その方が、貴女は悪くないって言ってましたから。」

私は、意味が分からず広瀬を見ると、広瀬は、私の腕を引っ張り、病院の入り口で止まった。


「広瀬?」

「さっきの、一部始終見ていた生徒って、黄瀬くんだった。」

私は目を見開き、驚く。

「胡桃ちゃんを突き落としたの、どうやら黄瀬くんの熱狂的な一年のファンで、お前を妬んで、悪さしてたらしい。
……胡桃ちゃん、心配してたからな。卯月が元気ないって。
カメラが壊されたときなんか、怒り狂ってたし。」


広瀬は、すまなそうに静かに話す。


「……黄瀬くん、自分を責めてないといいんだけど…。」



私は心配になって、携帯で涼太の電話番号を呼び出す。
でも、通話ボタンを押せず、結局携帯を閉まった。


「……お前ら、どんだけ不器用なんだよ。
……胡桃ちゃんは大丈夫だって、黄瀬くんに連絡してやれ。
きっと、心配してるだろうからな。」


そう言って、広瀬はまた待ち合いロビーに帰って行った。
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