第30章 秘密の約束
「私たち新聞部写真担当者は、毎年、卒業生全員にサプライズでプレゼントを贈るの。
海常高校生活3年分の写真データが入った、ディスクを一枚ずつね。」
「…え?ひとり一枚ですか?!」
「そう。ここは、その写真データを仕分けて保存するところなのよ。」
私は、パソコンに入れたディスクを元に戻し、閉まった。
「…全校生徒の写真を撮ってファイルしてるんですか…?こんな膨大に…?」
「…んー…膨大だけど、コツさえ掴めば、いけると思うよ…。」
あまりに驚かせてしまったのか、胡桃ちゃんが眼を見開いて固まってしまった。
私は、やっぱり早急過ぎたかと心配したが、胡桃ちゃんがやっと動き出した。
「美空センパイ、何で私をここに連れてきてくれたんですか?」
私は、胡桃ちゃんに向き直り、正式に頭を下げた。
「昨日の校内新聞の件は、私のせいなの。
これ以上部に迷惑掛けられないから、少し早いけど引退しようと思ってる。」
「美空センパイっ?!」
「…本当は、冬まで胡桃ちゃんと一緒に、色んなこと教えながら手伝って、この存在も、その時に教えるつもりだった。
だけど、…今のまま、私が新聞部にいたら、活動に支障をきたすし、この伝統も私の代で終わっちゃうから…。
…胡桃ちゃんに、ここを引き継ごうって決めたの。」
すると、胡桃ちゃんは両手をブンブン胸の前で振った。
「ム、ムリです!!撮影することだけでも、一杯一杯な私が、ここまで出来るはずないです!!」
胡桃ちゃんは、半泣きで首を横に振った。
私は頭をあげて、そんな胡桃ちゃんの両肩に手を置いた。
「直ぐに、全部やってなんて言わないよ。
胡桃ちゃんには、殆ど終わってる3年生分をお願いしたいの。
私は1・2年生を形にしておくから。」
そう言って、棚から3年生ファイルを出して、机の上に置いた。
「……」
胡桃ちゃんは、涙を溜めて、私を見つめ、そして、机に置かれたファイルを見て、小さく頷いてくれた。