第30章 秘密の約束
[美空]
次の日の早朝、私は新聞部の部室に来ていた。
「美空センパイ、おはようございます。」
「胡桃ちゃん、ごめんね。こんなに朝早く。」
「いいえ、どこか部活の朝練撮るんですか??」
胡桃ちゃんは鞄を部室の机において、自分の指定席に座った。
私は、胡桃ちゃんの目の前に、小さな鍵を置いてみた。
「?これ何ですか?何の鍵です??」
胡桃ちゃんは、目の前の鍵に興味津々で、私を見てきた。
「その鍵を持って、ちょっと着いてきて?」
私は、そんな胡桃ちゃんに苦笑しながら、部室を出るよう促した。
二人で朝の静かな校内を歩く。
教師用の印刷室へ入っていくと、その部屋にはまたドアがあった。
「その鍵で、ここを開けてみて?」
胡桃ちゃんに指示すると、胡桃ちゃんは恐る恐る、鍵穴に鍵を入れた。
解錠して、扉を開けると、シンプルな机の上に、パソコンがあり、横の棚には、膨大なディスクを収納したファイルがあった。
「ここ……どこですか?」
胡桃ちゃんは、ゆっくり部屋の中に入っていった。
「ここは、新聞部・写真担当しか知らない、秘密の作業室。」
私は、棚に入っているファイルを一冊手に取り、ディスクを一枚出した。
それをパソコンの中に入れ、ディスクの中の画像を呼び出す。
そこには、現在3年生の生徒の写真ファイルが保存されていた。
「これって……」
胡桃ちゃんは、パソコンの画面に映された写真を見た。
私は、机の上に置いてあった、今作業中のファイルを、名残惜しそうに撫でた。
「伝統の作業場って?」
胡桃ちゃんは、まだ理解できずに、私を見つめている。