第29章 嫌がらせと迷える心
= 新学期 =
今日から2学期が始まった。
新聞部は、夏休み活躍した部活の特別号を作り、校内に貼り出していたのだが…
「うわ…ひどい…。」
「誰がこんなことしたんだ?」
生徒たちが、掲示板に集まっている。
視線の先には、ビリビリに破られた新聞があり、風に吹かれて、空へ舞った。
この事態は、すぐに新聞部へ報告され、部員たちは部室に集められた。
広瀬は、破かれた新聞の欠片を一枚指で摘まみ、苦笑する。
「今までこんなこと、なかったんけどな。
この学校も物騒になったもんだ。
今後、教師陣には、新聞の張り出しを掲示ケースの中だけにしてもらうよ。」
「誰なんでしょう…。私たち、とても頑張って取材したのに…。」
胡桃ちゃんは、作り上げた新聞がひどいことになって、ショックを受けているようだった。
私は破れた紙の一部を見て、血の気が引いていく。
“ウソツキ”“卑怯者”“泥棒”
赤いインクで書かれた文字。
『…私のせいだ…』
私の視線が、破れた新聞に書かれた文字にいってると気づき、広瀬がその紙を握りつぶし、私の肩に手を置いた。
「なんか下らないこと考えてんだろ?…心配すんな。」
「…うん。」
新聞部は今日は取材をせず、解散になり、それぞれ家に帰ったのだった。