第28章 私は卑怯者なのかもしれない。
「…沢山の女子生徒が、黄瀬くんのことを好きでしょ?
その人たちにとって、私って、取材を利用して近づいた卑怯者にしか見えないよね。」
「うー…ん…。私は、美空が真剣に新聞部の写真取材をしてるって、知ってるし分かってる。
でも、美空のことを知らなかったり、黄瀬くんのこと好きすぎる人にとっては、残念だけど、そう思われるかも…。」
「…だよね。」
私は、涼太へ思いを告げる時、このことを考えていなかった訳じゃなかった。
いや、知っていたからこそ、一度彼への気持ちに封をしたのだ。
でも、溢れた感情は止められなくて、
「どうしたいのかな?美空ちゃんは。」
「……涼太も大事。でも、写真を撮るのも大事なの。」
「じゃあ、この話は秘密。
学校の人にもバレないように過ごそっ。大丈夫、私たち後1年もいないんだもん。どーにかなるよ。」
杏奈は笑って、カフェオレを飲んだ。
私もハーブティーを飲んで、一息つく。
「もし、大変なことになっても、黄瀬くんがいるし、私もいるし、新聞部の仲間もいるでしょ?
安心しなよ。」
そして杏奈は、私の鼻先を人差し指でツンツンして笑ったのだった。