第28章 私は卑怯者なのかもしれない。
あの日の翌日、和やかに朝御飯を食べて、涼太は家に帰った。
そして、それから会っていない。
その後の日々は、私は水泳部の取材があり、涼太はWCへ向けて、練習を開始したからだ。
そんなの中、新学期が迫ってくると、私の中にずっとあった不安が、徐々に膨れているのを感じていた。
だから、夏休み最終日、杏奈に話を聞いてもらおうと、代官山のカフェに呼び出した。
「え!?美空、黄瀬くんと付き合ってるの?!?!」
「杏奈!声が大きい!!」
目の前に座る杏奈は、目を大きく見開き、驚いていた。
「驚くようなこと言うんだもん。」
カフェで大声を出したので、回りのお客さんの注目を集めてしまう。
なので、杏奈は声を潜め、私も身を小さくした。
「ごめんね。」
私は両手を合わせて、謝罪した。
そんな私に杏奈は、手を振って笑っている。
「で、夏休み最終日に、私を呼び出して、交際宣言だけ?
なんか悩みがあるんでしょー??」
杏奈は、カフェオレのカップを口に持っていき、上目遣いで訪ねてきた。
「んと……。これからどうしたらいいのかなって。」
「は?付き合ってるんでしょ?
デートしたりとか、普通に楽しんだらいいんじゃない?
いいなー、羨ましっ!」
そう言って、杏奈は両手を組んで、乙女モードになった。
「そうじゃなくて……。」
「ん?」
「…別れた方がいいのかなと思ってて。」
私は視線を下げて膝を見る。
杏奈は驚いて、身を乗り出した。
「は?!だって、この夏休みの話なんでしょ?!付き合うって決まったの!!」
「うん。」
「え?!もしかして、もう心変わりとか?!」
「違うっ!違うっ!!心変わりとかじゃない。」
私は自分の前で両手を振って、否定した。
「じゃあ、何よ?」
私は、ティーポットで泳ぐリーフに視線を向けて、話始めた。