第23章 無自覚の誘惑
[美空]
涼太と二人で、電車に乗った。
座る席がないので、2人で車両の端っこに立っていると、ヒソヒソ女子の嬉しそうな声が聞こえる。
どうやら同じ車両にいる女子たちが、涼太を見て囁きあっているようだ。
私は、そんな女子たちからの視線を集めている涼太を、ちらっと見上げると、涼太は流れる窓の景色を、静かに見ていた。
そして、ふと、涼太が視線を私に向けて、笑った。
「なんスか?美空っち。」
「あっ……。いや、涼太はカッコいいね。」
「なんスか、急に。」
「いや、あの……なんとなく。」
自分が発した言葉が、あまりにも恥ずかしくて、誤魔化し笑顔で微笑むと、
「美空っち、この後どーするんスか?」
「え?そうだな……。
涼太、疲れてるだろうから家まで送って、出来れば、足のテーピングしてから帰るよ。」
「それって、俺んち来てくれるってことっスか?」
涼太は驚いた顔をしたので、迷惑かと判断して、両腕を組んだ。
「あ、急にお邪魔したら迷惑だよね…。
じゃあ、うちに来る?
お父さんもお母さんも今日はいないから、気を使わなくていいよ?あ、でも、うちに寄ったら、涼太が大変に」
「美空っちの家がいいっス!」
なんか食い気味に、返答されて驚いた。
けど、なんか涼太が楽しそうになったので、これでいいかと思い、深く考えないことにした。