第22章 涼太の傍へ
[美空]
=準々決勝・前日=
私は、ホテルの中庭から電話をしていた。
「広瀬、お願いがあるの。」
《なんだ?何か、厄介なことかよ?》
「……明日、そっちに戻りたい。」
《え?……お前それ、黄瀬のためか?》
「…明日の準々決勝、桐皇には、青峰くんがいる。…涼太のバスケ始めたきっかけの人。
…私、何も出来ないと思う。でも……傍にいたいの。」
《……》
「無理言ってるのは分かってる。明日、野球部は5回戦。大事な一戦だって。
…でも…………」
《…いいんじゃね。》
「え?」
《いいんじゃね、戻ってこいよ。そんで、黄瀬の傍で応援したらいいさ。》
「広瀬……。」
《俺たち、まだ学生だぜ?いいじゃん、青春したって。》
「…うん。ありがとう。」
《でも、間に合うか?準々決勝って、午後一だろ?》
「多分ギリギリ。でも、絶対間に合わせる。」
《そっか。…じゃあ、明日会場でな。》
「うん。広瀬、ありがとう。」
《…おう。おやすみ。》
そう言って、美空は電話を切った。
当日、私は、電車を乗り継いで、会場へ急いだけど、会場についたのは、試合終了3秒前。
涼太のディフェンスを、桐皇の5番が捩じ伏せ、ボールをゴールに叩き込んだ瞬間だった。
私は体育館前で、涼太を待っていた。
「え……美空……ち…?」
知っている声が聞こえて振り向くと、呆然として私を見つけた涼太がいた。
会いたかった、涼太。