第3章 見えなくとも傍らに
「話…ねぇ。つまりはあれか、我々と同行してカナヤと合流したいと、そういうことかな?」
「その通り。彼女の想いはここにある…だから僕は導かれた。君達といればカナヤと必ず会えると思ってね」
妙に確信めいた言い分に、ナルサスも若干の驚きが隠せないようだ。対するファランギースは顔色も変えず、ただじっとこの男を見つめているだけ。
ちょっと意地が悪かったかな。あからさまに向けられる敵意に、つい勿体ぶった言い方をしてかき乱したくなったカノンは、そう心中で呟いた。
カナヤが心を少しでも寄せた人間達だ。出来ることなら受け入れて、受け入れられたい。
それは容易いものではないのは承知しているが、予想より強い敵対心に、面倒だな、と思う。
この世界の現状を見れば致し方ないとはいえ、ソキウスを盾にしても和らがない雰囲気にため息をついた。
「…わかった。じゃあ、カナヤの特徴を上げるから、それで少しは信用の種にしてよ」
「ほう、カナヤの特徴か。面白いから聞いてやってもいい」
「ナルサス!」
「まあ聞くだけだからな。そう苛立つなダリューン」
咳払いして人差し指を立てて、深呼吸して言い出す。
「その1、全く女らしさの欠片もない。カナヤは男装を好むでしょ?まああの体つきじゃね…」
「ぶふぉッ」
のっけからハードなネタ(お子様的に)が飛び出して、後ろにいたエラムが俄に吹き出した。
「その2、暇さえあれば歌を歌ってる。その3、動植物に普通に話しかけててちょっと大丈夫かなって心配になる。その4、いろんなことに首を突っ込むのに全部中途半端。器用貧乏というか…好奇心だけは旺盛だからね。その5、女子供に甘い!彼女年下っぽい人には特にそういう傾向があるよ。……ああ、カナヤああ見えて君たちより随分年上だからね」
暫しの沈黙の後、あたりに響き渡る程の悲鳴がこだました。
「ち、ちょっとまて!つまりどういうことだ」
「…アレで?世間知らずで器用貧乏で一人じゃ生きていけそうにない、あのカナヤが私より年上?」
「いろんな意味ですごい評価の女人じゃのう」
「…ああ、だから私はしょっちゅう頭を撫でられていたのか。なっと「納得するな」……はい……」