第9章 ライバル、梟谷学園
試合中、ちょっとしたアクシデントがあった。
選手同士で軽い衝突があり、黒尾が足をひねったのだ。
「黒尾、ちょっと休んでろ。凪沙、あと頼んだぞ。」
衛輔に声を掛けられ、凪沙はわかった、と短く答える。
黒尾がコートを出ると、試合はすぐに再開された。
「ナギ、コールドスプレーあるか?」
「はい。」
シューズと靴下を脱ぐ黒尾に、凪沙はそれを手渡す。
(湿布と、テーピング……。)
凪沙は救急箱から物色する。
「少し腫れてますね。大丈夫ですか?」
「大したことねえよ。」
凪沙は湿布にはさみを入れてを適当な大きさに切る。
「貼りますね。」
恐る恐る彼の足首にそれを貼り、固定するためにテーピングを巻き始める。
「貸して。」
慣れない動きをする彼女の手をどけて、黒尾は自分で手当てを始めてしまう。
「自分でやったほうがはやい。」
「……すみません。」
黒尾は怪我をした自分への苛立ちと、試合運びがうまく行かない焦りでピリピリしている様子だった。
凪沙の落ち込んだ顔を見て、
「あ、俺こそごめん。なーちゃんはまだ入ったばっかりだから仕方ないって。気にすんなよ。」
凪沙に向かって笑顔を作った。