第9章 ライバル、梟谷学園
残された孤爪がムクリと起き上がった。
「研磨、おきてたの?」
「んー、そうでもない。」
「なにそれ。」
不思議そうな顔をする凪沙を少しだけ見てから
「ナギが赤葦にデレデレしてたって夜久さんに言っとこ。」
孤爪は脱いであった靴に足を入れる。
「やめてよ。デレデレなんてしてないし。」
「どうだか。まあ、別に言わないけど。めんどくさいし。」
靴ひもを結んでいる彼の指先を眺める。
(不機嫌……。寝起きだからかな。)
気分を変えようと話題を振る。
「研磨と赤葦は仲良しなの?」
「仲良しっていうか……タメだし、同じセッターだし、あの元気な人たちのノリに付いていけない同士って感じかな。」
「あーなるほど。」
凪沙はさっきの男たちを思い出してクスっと笑った。
「さっきはありがとうね。」
「別に……。実際助けたのは赤葦でしょ。クロすぐに調子乗るし。ナギが不機嫌になるのもめんどくさいし。」
器用にちょうちょ結びを作り終えて、孤爪は立ち上がった。
「ナギはさ、初対面の男にはガード固いけど、慣れると無防備すぎる時あるから。気を付けたほうが良いと思うよ。」
つま先をトントンと地面につけて靴をならす。
「え、どういう意味?」
「そのくらい自分で考えてよ。」
休憩終わるよ、と言って孤爪は背を向けて歩き出した。
(へんな研磨……。)