第8章 人見知り同士
「よ、よく分かんねえけどさ。彼女、嫌がってんじゃねえの?」
「そんなことないよ。ちょっと恥ずかしがってるだけだって。
山本には分かんないだろうけど、女子にはよくあることじゃん。」
その言葉に、山本はカチンとくる。
「一言余計なんだよ、お前。イケメンぶりやがって。」
「はあ?じゃあお前に彼女の何が分かるんだよ。」
挑発された武田が凪沙から離れて山本に近付く。
「そいつはうちのマネージャーだ。勝手なことされると困る。
ていうかうちの部長と夜久さんがキレる!」
「なんだそれ、今そいつら関係ないだろうが。」
言い争う二人を目の当たりにして、凪沙が逃げるべきか止めるべきか悩んでいたら
「凪沙、凪沙、こっち。」
背後から小声で呼ばれた。
「孤爪君?」
手招きしている彼のほうへ駆け寄る。
「えっと、大丈夫……?」
孤爪は目の前に来た彼女に遠慮がちに声をかけた。
一連の出来事に対する驚きと恐怖で、凪沙の表情は強張り、肩は小さく震えている。
「今のうち、逃げよう。」
孤爪はそれだけ言って、早足で歩きだした。
彼女は黙って後ろからついていく。