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【ハイキュー】ギフト

第8章 人見知り同士


同じとき、部室棟の裏には、もう一人別の人物がいた。

人気のないそこに座って、こっそりとゲームをしていた孤爪だ。

ちょうど物陰になっていたので、二人は彼の存在に気付かない。

(どうしよう……きまずい。)

盗み聞きするつもりはないのだが、今更出て行くわけにもいかず、息を潜める。

(早くどっか行ってくれないかな。)

そう思いながら途方に暮れて空を仰いだ。

「あの、私……武田君、のことも全然知らないし、
そもそも誰かとお付き合いするつもりも今はないというか……。
なので、ごめんなさい。」

凪沙の弱々しい声が風に乗って孤爪の耳にも届いた。

「付き合うって言っても、最初は普通に友達みたいな感じでいいからさ。
大丈夫、俺見た目より全然チャラくないから。安心して。」

意外にしつこく食い下がるんだな、と孤爪は彼の図々しさに尊敬すら覚えた。

「いや、武田君がチャラいかどうかは分からないけど、
とにかく私は……、て、え、ちょっとまって、待って……やめてっ……」

「大丈夫、ちょっとだけ……。」

二人の様子に異変を感じて、孤爪は見たくもないが、ついそちらに目を向けた。

(うわ……やばいんじゃないのアレ……。)

そこでは凪沙が壁際に追い詰められて、いわゆる「壁ドン」の図となっていた。

そこからさらに抱きしめようとしているらしく、腕を彼女の背中に回そうとしているが、凪沙はそれを両手で断固拒否している。

(どうしよう、助けたほうが良いのかな……。)

孤爪は焦るが、どうすることもできずに辺りをキョロキョロする。

そこへ、向こうを通りかかった山本の姿が目に入る。

(トラ……助けて!)

孤爪は彼に向かって念を送るが、もちろん気付くはずもない。

再度二人の方をみると、諦めない彼と、拒む彼女のこう着状態は続いていた。

あの様子なら、こっちには気づかないだろうと踏んで、孤爪はこそっと物陰から走り出た。
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