第7章 新生活
「あれはセッターっていって、トスを上げる役目なんだ。
あいつがどれだけ動かずに落ち着いてプレーできるかがカギだな。
周りのレシーブ力が高ければ高いほど、セッターは良いトスが挙げられる。
良いトスが上がればいい攻撃につながる。」
「レシーブって、大事なんですね。」
「そういうこと。どう、ちょっとは興味でてきた?」
黒尾の質問には答えずに、凪沙は別のことを考えていた。
「あの人、同じクラスなんです。金髪のセッター。」
「ああ、研磨な。そうみたいね。」
あいつがどうしたの。と黒尾はコートに視線を戻す。
「すごい人だったんですね。クラスじゃそんな感じ全然しないので驚きです。
私初心者ですけど、あの人が重要っていうのはなんとなくわかります。」
「へー。初見で研磨のすごさを感じるなんて、お目が高いね、なっちゃん。」
黒尾は嬉しそうに凪沙を見下ろした。
「なっちゃんは馴れ馴れしすぎますね。」
黒尾の性格を掴んできたのか、凪沙は冷たく突っ込む。
(夜久の話だと体力は問題ないってことだったし、
男性嫌いだけは心配の種だけど……慣れれば先輩の俺にも物怖じせずに話ができるか。)
彼なりに凪沙を観察してから、口を開いた。
「無理強いはしないけどさ、おもしろそうって思ってくれたなら、マネージャーの件考えてみて。」
「……はあ。」
試合から目を離さずに凪沙は返事をした。
「おーい、夜久、交代して。俺入るからお前も外から見てみてくれ。」
「わかったー。」
黒尾に代わって、衛輔が隣にやってきた。