第7章 新生活
「集合!」
黒尾の号令で、バラバラに練習していた部員が体育館の隅に集まる。
「マネージャー志望の娘がいるから紹介するぞー。」
黒尾のその言葉を受けて、みんなの視線がそのまま凪沙に注がれる。
(ちょっと待って、話が違う。見学だけって言った!)
凪沙は衛輔に視線で訴えるが、知らんふりをされてしまう。
「……2年3組、夜久凪沙です。今日は見学に来ました。」
小さな声でそれだけ言って頭を下げた。
「うおおおお!ついに!ついにバレー部にも女子マネが!!」
山本が感激して目に涙を浮かべる。
「いや、見学だけ……。」
凪沙がそう訂正しても、山本の耳には届かない。
(ハメられた……?)
そう確信した凪沙は、衛輔を捕まえて問い詰める。
「ねえこれどういうこと。私見学だけって言った。」
「細かいことは良いじゃん。とりあえず見学してけよ。
どうせ入部届出さなきゃ正式に入部じゃねえし。」
「なんか衛輔、私のことハメようとしてない?」
疑いの視線を送る凪沙。
「おーい、モリスケ、ナギスケ、何してんの。」
黒尾が寄ってきて声をかける。
「なんですかそれ。」
「ん?ゴロが良いなと思って。モリスケの妹だから、ナギスケ。」
「やめてください。」
凪沙は心から嫌そうな声を出して抵抗する。