第7章 新生活
すると衛輔は、すっと腕を伸ばして、凪沙の肩を抱いた。
「羨ましいだろ。こんな美少女の妹、お前の家系じゃできっこないからな。
いいか、俺の大事な妹に手出すなよ!」
からかってきた男子生徒に向かって言い放つと
「堂々としてりゃいんだよ。なにもやましいことなんてないんだからさ。」
凪沙の耳元でそうささやいて、いつものように笑い、
「箸、ありがとな!」
ポン、と背中を叩いて凪沙を廊下に送り出した。
「てっきりいつもみたいに怒鳴り散らすかと思ったのに。」
一部始終を見ていた黒尾がパンをかじりながら言う。
「俺だって時と場合は選ぶっつーの。」
「ふーん。随分大事にしてんのね。」
「妹なんでね。」
衛輔は席について弁当を広げた。
「やっくんのお弁当おいしそう。お母さん?」
「そー。広子さん料理上手なんだよ。」
「そういえばさ、入部届何人かきたぞ。」
黒尾が話題を変えると、衛輔は目を輝かせた。
「まじか!この前の長身ハーフは!?」
「来てた来てた。
あいつ初心者だけど仮入部の時運動神経よかったし、期待できるよな。
これで女子マネも入れば山本は泣いて喜ぶんだろうけどなー。」
「まあそればっかりは仕方ないな。サッカー部バスケ部にマネージャーは集まるし。
そういえばあいつ部活どうしたんだろ。」
弁当のおかずを端から順番にきれいに食べていく。
「え、妹ちゃんまだどこも入ってないの?」
ひょいっと黒尾は衛輔の弁当箱からから揚げをつまんで口に入れる。
「たぶん。そういう話してないし。ていうかおかずとるなよ。」
「じゃあマネに誘ってみろよ。男嫌いの美少女マネと、女性と緊張して話せない山本の絡みとか見物じゃね?」
「ばか。おもしろがってんなよ。」
でもまあ、一応声はかけてみてもいいけど、とだけ付け加えておいた。