第7章 新生活
「凪沙、これ俺があとでやるから、お前は他の荷物片付けとけ。あとこれ、もらったから冷蔵庫入れといて。」
彼女の手から家具の部品を取り上げて、代わりにケーキの箱を押し付ける。
「こんにちは。衛輔君の友達の黒尾鉄朗です。よろしく。」
目ざとく近づいてきて、凪沙に笑顔で話しかける。
「あ、どうも……。」
凪沙はそれだけ言うと、衛輔の陰に隠れた。
「黒尾、こいつ人見知りするし、女子校育ちで男が苦手なんだよ。
だからいきなり来られても仲良くなんてなれねえぞ。」
仕方なく、衛輔は黒尾にそう説明した。
「へー。でもやっくんには懐いてんのね。」
衛輔の背後にぴったりとくっついて警戒心をむき出しにする凪沙を見て、そう言った。
「まあ、一応兄妹なんで。」
「ふーん、凪沙ちゃんね、目おっきいし白いし美少女じゃん。新学期が楽しみだねー。」
あ、それ言っちゃまずいやつだ……と衛輔はヒヤリとする。
案の定、凪沙は何も言わずにぴゅっと部屋の中に引っ込んでしまった。
「あれれ?俺なんかまずいこと言った?」
「まあ、黒尾のせいだけど、あいつにも原因はあるからなあ。
気にしなくていいけど、あんまりからかわないでくれよ。」
衛輔はそう言って、黒尾を見上げた。