第7章 新生活
「あんだよ?部活は午後からだろ?」
「やっくん今日引っ越しって行ってたから、手伝ってあげようと思って。」
電話の向こうで黒尾は楽しそうな声を出した。
「は?引っ越すの俺じゃねえし。」
「細かいことは気にしない。もうおまえんちのすぐそばだからさ。
お土産もって新しい妹ちゃんとお母さんにご挨拶させて。」
黒尾のニヤニヤした顔が目に浮かんだ。
「お前なあ……。」
ため息をつきながら、衛輔は玄関に向かう。
「よう。元気に引っ越しやってる?」
ドアを開けると、そこにはちょうどやってきた黒尾の姿があった。
「……お前、ちょっと待て。ストップ。」
衛輔はそう言って黒尾の腕を引っ張って庭の方に回らせる。
「あ、これ。みなさんでどうぞ。」
黒尾にケーキの箱を渡されて、衛輔はそれを受け取る。
「どうも……て、そうじゃなくて、いきなり来るなよ。」
「え、でも妹ちゃん新学期からうちの学校なんでしょ。
緊張してるかもしれないから、こんな優しい先輩がいるよって安心させてあげなきゃ。」
家の中の様子をうかがおうとする黒尾を、衛輔は慌てて阻止しようとする。
「なんで邪魔すんの。」
「まあ聞け。たぶん凪沙はお前みたいなタイプ苦手だと……」
「衛輔ー。こんなとこでなにしてんの。これどうしたら、いい……か、な……」
衛輔の背後、庭につながる窓を開けて、家の中から凪沙が姿を現した。
手には、さっきとちゅうまで組み立てた家具。
そして、黒尾の姿を目にして、固まっている。
(誰だろう。でかいし、なんか、怖い……。)
そんな彼女の様子をみて、衛輔は急いで駆け寄る。