第6章 ひらいて
「けほっ……信じらんない……!」
プールサイドに座り込んで、せき込みながら凪沙は毒づく。
「いや、まさかあんな引っ張るとは……。」
鼻に水が入ったらしく、苦しそうに咳をし続ける凪沙の背中をトントンと叩いてやる。
「悪かったって……。大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……うー、のど痛い……。」
彼女の顔を覗き込むと、涙で潤んだ瞳と目が合う。
(うわっ……)
衛輔は自分の頬が一気に熱くなるのを感じる。
ぐらりと理性が揺らいで、実はずっと直視するのを避けてきた彼女の身体に視線が移る。
(ダメだ、見たら……。)
そう頭では思っているのだが、目が離せなくなる。
塗れた滑らかな肌、浮き出た鎖骨、細い肩、腰、手足、程よい大きさの胸……。
(やっべえ……!)
下半身が反応してきたことに焦ってしゃがんだまま動けないでいると、
「苦し……。あー、耳にも入ってるかも。」
凪沙は立ち上がってびょんびょんと跳ねた。
衛輔の異変には気付いていないようだ。
「ほら、早く行くぞ。親父たち心配する。」
衛輔は乱暴にタオルを彼女の身体にかぶせ、
赤くなった顔と、通常よりも存在感を増したそれを悟られないように更衣室へと向かった。
「もう、衛輔のせいだからねー。」
凪沙は体を拭きながらその背中に不満をぶつけたが、彼には振り返る余裕はなかった。