第2章 ファーストコンタクト
その日が衛輔と凪沙は初対面だったが、大人の二人はそれぞれの子とはもう何度も会っていた。
「衛輔は、妹ができるって聞いて楽しみにしていたんだよな。」
父にそう言われて、衛輔は少し恥ずかしそうに口をとがらす。
「別に、そこまでじゃないよ。」
「凪沙は緊張しちゃって、ここまで連れてくるのも一苦労だったのよ。
いつまでも甘えん坊で。衛輔君みたいなお兄さんがいたら、少しは強くなってくれるかしら。」
広子がそう言って凪沙の方を向く。
「知らない……。」
彼女は俯いたまま一言つぶやいて、席を立った。
「トイレ?」
「うん。」
「エレベーターの向こうよ。分かる?」
「うん。」
そそくさと逃げ出すようにテーブルを離れた。
「ごめんなさいね、いつもはもうちょっとしゃべるんだけど。
人見知りしちゃって。」
「凪沙ちゃんは繊細なんだよ。衛輔は活発だから、うまくバランスが取れると良いな。」
大人同士はなれた様子でにこやかに食事をすすめる。
「特に男の子に苦手意識持ってるみたいで。
やっぱり女子校に通わせたのが良くなかったのかしら。
衛輔君、気を悪くしないでね。」
「俺は全然、気にしてないけど。」
そう返事をして、衛輔はまだ戻らない凪沙の席を見遣った。